サマーエンド・イレギュラー
         〜789女子高生シリーズ
          『サマーエンド・ラプソディ』 後日談

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


何も“九月に入ったら”というのは、
節季の区切りではないのだけれど。
それでも、八月がこうまで押し迫ると、
ついのこととて、
ああ もう夏も終わるんだなぁという感慨になるのは、

 「皆さん、学生時代の夏休みが羨ましいからでしょうかねぇ。」
 「〜〜〜???」
 「うん、アタシもそれは違うと思います。」

確かに学生さんたちの生活リズムってのは、
大人数が一斉に同じ行動を取るせいか、
世相全体へも結構大きな波及をもたらしますけど。
羨ましいからってのはどうだろか、と。
割りと冷静な指摘、今時の言いようで“ツッコミ”を入れてから、

 「つか、ヘイさんたら
  どんどんと日本の方にこそ馴染み深い感覚になってますよねぇ。」

 「あら、アメリカの学校だって、この時期は夏休みですよ?」

なぞと言いつつ、
子供のおもちゃのようなサイズながらも、
扇子じゃあなく真ん丸な団扇を
ぱたた…と懐ろ辺りで扇いでおいでなのだから。
生まれも育ちも米国の筈なひなげしさんだってのに、
日本通なところが深まっているのは間違いない。

 「それにしても、いつまでも暑いですよねぇ。」

あと数日で九月だとはいえ、
昼間ひなかの蒸し暑さは相変わらずで。
とはいえ、だからって、外出しない訳にも行かぬ。
いや、学校はお休みなんですが。
アルバイトがあるって訳でもありませんが。
それでもそこはやっぱり、
好奇心が旺盛で、フットワークが良すぎる、
十代というお年頃の、
為せる技というか、性分・性質というものか。
ウチでゴロゴロしてるだけじゃあ詰まらぬと、
ついついお出掛けに運んでしまうお元気さよ。
勿論 無論、身だしなみも怠りはなく。
汗の出方も半端じゃあないため、
お化粧にもいろいろと工夫と手間が要るが、
そこは まださほど本格的にあれこれ塗りたくる年齢じゃあなし、
すっぴんにも自信ありというお嬢さんたち。
それでも日焼け止めは基本だし、
汗のせいで匂うのは御免だと、デオドラントにも気を遣う。
髪だって、
束ねなきゃ暑いけどそうなるとクセがつくし、
帽子をかぶれば崩れるし…と、
悩みは尽きぬ中、それでも頑張るのが年頃の女の子。

 「汗とは微妙にズレますが、
  涼感ブラって知ってますか?」

相変わらずに大好きな、
某ビジュアル系音楽ユニットさんたちの新譜の話から、
流行のファスト・ファッションの
新しいショップの情報に移った途端。
あっと思い出したように表情を撥ねさせ、
そんな話を持ち出したのが、ひなげしさんこと平八で。

 「?」

キョトンとしている紅ばらさんの細い肩に片手をおいた、
金髪娘のもう片や、
白百合さんこと七郎次が、
淡いリップグロスでつやつやに濡らした口許をほころばせる。

 「アタシ、知ってますよ。
  機能性下着みたいな素材で作ってあって、
  汗をかくほど涼しくなるんですってね。」

  さっすがヘイさん、素材工学にも明るいんですのね。
  というか、アンダーに汗をかくと えらいことになるもんで。
 ……巨乳だから。
  や…っ、あの、そおいうわけじゃあ/////

もうもうもうと、恥ずかしがってるひなげしさんだが、
ふんわりと甘く香るのが赤ちゃん用のタルカムパウダーだというのは、
あとの二人のお友達もとっくにご存知なこと。
日頃 お姉さんぶっているくせに、
もうもう可愛いったら…とか感じたか。

 「………vvvv(喜、喜)」

めずらしくも紅ばらさんから白い腕を延べ、
更紗のジレ越し、ひなげしさんを懐ろへと抱き込めば、

 「あ、久蔵殿、独占は無しでげすよvv」
 「こらこら、二人とも暑苦しくないの?///////」

きゃ〜ん、可愛いvvと、
瑞々しい風貌のお嬢さんがたが、
話の弾みでキャッキャと抱き付き合ってたりする図は。
さすが身だしなみの涼感効果の恩恵か、
それとも、
柔らかそうですんなりした白い腕や、
マイクロミニの上をゆくほど短くてドッキドキのホットパンツから
惜し気なくあらわにされた長い御々脚の眩しさからか。
見た目 まったく暑苦しくないから大したもので。
瑞々しくて香りも甘く、
きっと味わいだってまろやかに違いない、
今どきが食べ頃の水蜜桃のように、
愛らしくって蠱惑に満ちたお嬢さんがた。
かてて加えて、
よくよく見やれば 半端ない美貌風貌の持ち主と来て、

 “うあ、すげカワイイじゃんか。”
 “下手なアイドル霞むって。”
 “あんな子 連れて歩きてーvv”

気を抜くと、
項垂れてしまいかかる青少年たちのなけなしの精気を、
見やるだけで難無く奮い立たせるなんて。
雑踏の中でも一際目立ってしょうがない、
まさにオアシスみたいな彼女らだったが、

 「ああ、これこれ。そこなお嬢さんがた。」

口許に両手を立て、
わざとらしくもメガフォンを作ってのお声かけがあり。
特に大声だった訳じゃあないが、
それでも目的の相手へ通らせるコツを心得ておいでか。
お喋りにはしゃいでおいでだった娘さんたちへ、
ちゃんと届いたようであり。

 「え?」
 「あ。」
 「わ…。////////」

ショッピングモールと駅ビルとが間近になってる
プチ繁華街の取っ掛かり。
ガラス天井のアーケード、
ガレリアの入り口辺りで待ち合わせた、
そのお相手の到着とあって。
見せた反応が三者三様だったのは、
果たして…直前までのお喋りの内容のせいだけだろか。

 “いや。
  機能性ブラの話くらいで照れる子らじゃないでしょう。”

こっちだって そのっくらいで焦る若人じゃありませんしと、
それでも困ったさんたちだねと仄かに苦笑したのが、
佐伯征樹という男性で。
その彼が軽快な足はこびでやって来た先、
舗道近くへ一時停止中のセダンの窓には、
一番最後の反応、きゃんと頬を赤らめた白百合さんの想い人、
島田勘兵衛 警部補様が、
微妙にやれやれという気色の
やはり苦笑交じりでこちらを見やっておいでだったので。


  ………今度は一体何をやらかしたんだ、あんたたち。


  「まあ、失敬な。」
  「………。(頷、憤)」
  「そうですよ、もーりんさん。」


たちまち頬を膨らませ、あらぬ方向へと非難囂々…になるのは、
話がややこしくなるんでおやめなさい。
はいはい、わたしが悪うございました。






     ◇◇◇



平日だったが、それでもまだ夏休み中。
よって“サンデー毎日”な人種が多いはずだが、
それにしては人口密度が低かった駅前という待ち合わせポイントから。
一際目立っておいでだった三華様たちを
余裕でナンパして掻っ攫ってった、
彼女らより ずんと年嵩のおじさんたちは、
これでも一応 警視庁勤務の刑事さんたちであり。

 「つか、俺も“おじさん”扱いでしょうか。」
 「だって佐伯さん、大学生以上だし。」

 それだともう“おじさん”なのかい?
 わたしたちはそうは思いませんが

…と言葉を濁したひなげしさんに加勢して、
もーりんが詳細を付け足せば。
声をかける度胸もなかったくせして、
まんまとトンビに油揚攫われたと思ったクチからは。
選りにも選って あんなおっさんたちに……と、
歯痒がられた挙句のせめてもの悪口雑言、
各々の内心で叫ばれてたに違いなく。

 「自分たちこそ、往来で下着の話なんてしてたくせに。」

 いくら中身は微妙に女子高生じゃないからって。
 いやいや、女子高生だって今時じゃそのくらいやらかしますって。
 女の子へどんな夢を持ってるんですか、佐伯さん…と。

ひなげしさんという加勢つきで、
もーりんが佐伯巡査部長をつついている間にも、

 「…あの、///////」

こちらはこちらで、
やはり今時の話題に弾けていたものが、
島田警部補殿のお隣という助手席に押し込まれてからこっち、
大人しやかにもじもじと、含羞んでばかりいる白百合さんで。
相変わらず…ちょっとでも大きな動作をすれば、
シャーリングっぽい細かいなみなみの加工がされた短パンの縁から、
白桃みたいな可愛らしいお尻の丸みが
こぼれるんじゃなかろかと案じさせるよな。
刑法領域ぎりぎりという短さのボトムを、
あんな繁華街まで堂々とはいて来ておいでだったのに。
今は打って変わって、
えっとうっとと
言葉さえ出ないほど恥じらっておいでな態度だったりする、
大胆なんだか清楚なんだか、バランスのややこしさも健在で。

 “昔も、大胆には違いなかったが。”

まだ少年の気配も濃いまま赴任して来たおりだって、
鼻っ柱は相当に強かったし。
環境からいろいろ吸収し、苛酷な状況へ慣れれば慣れたで、
果断な行動をこなせるだけの度量をめきめきと培い、
周囲の大人たちに引けを取らないもののふへ
成長しもした七郎次じゃああったし。
その当時の記憶を、
まるで二重露出になった写真のように
今の生の中でも持ち合わせている状態の身の上。
苛酷さも錯綜も刷り込まれていながら、
なのに女性の身だというのは歯痒いことも多いのではないかと思いきや、

 “年端のゆかぬ娘御だというに、
  大胆不敵な挙動は、むしろ拍車が掛かっておるようだからの。”

自由奔放が利く時代だから、というのもあろうが、
おかげで周囲はますますのこと、ハラハラらせねばならぬと。
そんな金髪の美少女さんへ、
いかにも和んでのこと、
目許を柔らかくたわませて、笑んでおいでの警部補殿も。
さすがに…大胆なファッションという点へだけは、
微妙な男心から 看過出来なかったものか。
がらんとした庁舎内の歓談室へとお嬢さんたちをいざなうと、
まずはと自分のジャケットを
ほれと草野さんチのお嬢さんへ差し出し、
膝掛けにしなさいと、わざわざ言ってあげたのだったりし。

  それから さてと

 「兵庫殿へも先程 報告は入れた。」

こちらの殿方たちと接触してから、
特に口許に力みの入っている久蔵へ向けて。
その心情が多少は察せられるのか、
それにしては、緊張している様子が微笑ましいと思ったか。
声こそ低めた勘兵衛だったが、
あまり深刻な話しっぷりにはならぬよう、
トーンはあまり重くならぬように心掛けて差し上げて。
それへ、

 「……。(頷)」

判った了解と頷いたのを見定めてから。
その兵庫さんとそれから、
こちらの寡黙なお嬢さんが極秘に依頼して来た、
とある追跡調査のお話を始めた、壮年警部補殿だった。





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帰り道 サマヘ 背景素材をお借りしました


 *ちょこっと間が空きましたが、例の微妙なコラボの後日談+αです。
  さらっと書ければいんですが…。


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